
カフィアライム(和名:コブミカン、学名:Citrus hystrix)**は、厚くゴツゴツとした果皮と力強い柑橘の香りが特徴の小〜中型のミカン科の植物です。ベトナムでは「チャイン・スン(chanh sần)」または「チュック(chúc)」と呼ばれ、東南アジアを原産地とし、特にベトナム南部アンザン省のバイヌイ(七つの山、Thất Sơn)地域で広く栽培されています。非常に丈夫な性質を持つコブミカンは、南ベトナムの厳しい暑さの中でも手間をかけずに育ち、自然環境に順応します。果実をつけるまでには5〜8年かかりますが、樹齢を重ねるごとに収穫量も増加します。収穫期は雨季の始まりにあたる旧暦の1月から2月頃です。
とりわけ果皮と葉には精油が豊富に含まれており、その芳香と機能性の高さから、コブミカンはクメール系住民の暮らしに深く根付いており、古くから日常生活の中で多様に活用されてきましたが、今や高付加価値な農産物として注目されています。用途は多岐にわたり、地元料理からコスメ、さらには精油製品にまで活用されるなど、現代においてもその価値はますます広がっています。

コブミカンの精油は、鋭く鮮やかな柑橘の香りを持ち、気分をリフレッシュさせるような爽快感があります。未熟な果実の外見が似ていることからベルガモットと混同されることもありますが、コブミカンの香りはベルガモットにあるようなフローラルな甘さはなく、もっとストレートでキリッとした柑橘の印象が際立ちます。香りは、まるでライムの皮をむいた瞬間のようなフレッシュさを思わせ、ほんのりとしたグリーン調が清潔感と活力を感じさせます。強すぎることなく、日常使いにも適した穏やかで心地よい香りで、まるで南国の陽ざしとそよ風に包まれているような、明るく前向きな気分へと導いてくれます。
aremeで使用しているコブミカン(カフィアライム)の精油は、ベトナム南部・メコンデルタ地帯の中でも特に自然と文化の多様性に富んだアンザン省のバイヌイ(七つの山/Thất Sơn)地域で、自然栽培された樹木から採取されたものです。 「Thất Sơn(七山)」という名前のとおり、この地域は山と平野が交差する半山地帯で、美しい棚田や神聖な湖(Ô Tà SócやSoài Soなど)に恵まれた、息をのむようなきれいな風景が広がっています。
この地域には、クメール族、キン族(ベトナム人)、ホア族(華人)、チャム族といった多民族が共生しており、古代オケオ文明(Óc Eo)の豊かな遺産を受け継ぐ土地でもあります。こうした自然と文化の融合は、儀式や建築様式だけでなく、地域に根ざした植物の活用方法にも色濃く表れています。その代表的な例がコブミカン(現地では「チュックーchúc」と呼ばれています)です。
アンザン省によく見かける伝統建築の家です。日除けや来客用に設けられた前庭と、地域に見られる鳩の装飾が特徴です。
「ムバラク・モスク」- アンザン省に住んでいるチャム族が通う歴史のあるイスラムモスク
コブミカンの果実と葉は、地元の人々の暮らしに長く寄り添ってきた存在です。料理の香り付けとしてはもちろんのこと、伝統的な民間療法、髪のケア、魚の養殖池の消毒、さらには蛇よけとしても活用されてきました。今でも多くの女性たちが、果実を煮出したお湯で髪を洗い、自然な香りと指通りの良さを楽しんでいます。また、地元料理の中でも欠かせない風味の要素となっています。代表的な料理には、香ばしい「gà đốt Ô Thum(オートゥム風グリルチキン)」、葉の香りが広がる「gà hấp lá chúc(コブミカン葉の蒸し鶏)」、風味豊かな「khô gà lá chúc(コブミカン葉入り鶏ジャーキー)」、香り高い「bò nướng lá chúc(牛肉の葉包み焼き)」、そしてやさしい香りが広がる「cháo bò(牛肉のお粥)」などがあり、どれもこの果実ならではの個性と風味を感じられます。

アンザン地域は、雨季と乾季がはっきりと分かれた熱帯性気候と、肥沃な沖積土壌に恵まれており、コブミカンの栽培にとって理想的な環境が整っています。特にチートン(Tri Tôn)やティンビエン(Tịnh Biên)などの地域では、地元農家が昔ながらの方法でコブミカンを自然栽培することが多いです。
コブミカンの樹は、乾燥に強く、手間をかけなくても元気に育つほど環境への適応力が高く、現地の気候風土に非常によく合っています。種や挿し木から増やすのが一般的で、自宅の庭先や小さな果樹園で育てられることが多く見られます。
コブミカン(カフィアライム)精油は、リモネンやシトロネラールといった有効成分を多く含み、科学的にも一定の効果が報告されている精油のひとつです。主な効果が以下です:
- 気分を整え、リラックスを促す: 柑橘らしい爽やかさにグリーン調が加わった香りが、不安や緊張感を和らげ、心を落ち着けてくれると言われています。
- 抗菌・抗真菌作用: 一部の細菌やカビに対する抗菌効果が研究で示されており、空間の除菌や表面クリーナーとしての活用にも適しています。
- 天然の虫除け効果: 成分のリモネンやシトロネラールには蚊などの虫を寄せつけにくくする作用があり、ナチュラルな虫除けとして活用できます。
- スキンケアのサポート: 適切に希釈することで、皮脂バランスの調整やニキビの原因菌の抑制に役立つとされています。
おすすめの使い方:
- アロマディフューザーでの芳香浴:ディフューザーやアロマポットに3〜5滴ほど垂らし、空間に香りを広げて気分をリフレッシュ。
- ナチュラルな除菌スプレー:70%以上のアルコール100mlに対して10〜20滴加えて、テーブルやキッチン周りの除菌・消臭用スプレーに。
- 天然虫除けスプレー: 水や植物オイルと混ぜ、カーテンや窓辺にスプレーして虫除けに活用。
- ボディオイルやロールオン香油として:キャリアオイル(ホホバオイルやスイートアーモンドオイルなど)に1〜1.5%の濃度で希釈し、ボディマッサージや香油として使用。
- ヘアケア:シャンプーやヘアリンスに数滴加えることで、頭皮のニオイケアや香りづけに。