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収穫日記:ポメロブロッサムの咲くある春の朝

ハノイ3月初旬

私たちがポメロブロッサム農園(ブンタンの花農園)に到着したのは、まだ3月初旬の朝の早い時間でした。ハノイの空気は、夜明け直後のすがすがしい静けさに包まれていましたが、木々たちはすでに目を覚ましていました。白いポメロの花がいくつも揺れて、まるで私たちを迎えてくれているようでした。朝のやわらかな光が枝を通り抜け、地面に穏やかな影を落とし、辺り一帯には、開花したポメロの花のやさしく甘い香りがふんわりと広がっていました。それは控えめだけれど、確かに“生きている”香りでした。

私たちは原料収穫確認のついでに何世代にもわたってこのポメロ花を自然栽培してきた農家の方々と一緒に、収穫の現場見学をさせていただきました。私たちは製造のチームの一員として、これまで何度もポメロブロッサムの精油に携わってきました。収量を計算し、蒸留した精油の香りノートを分析し、精油をボトルに充填しました… けれど、その“はじまり”に、こんなにも近づいたのは初めてのことでした。

農家の方々は、どの花が摘み頃なのかを見極める方法を教えてくれました。一見するとシンプルな作業に思えますが、実際には経験と勘がものを言う世界であることが伝わってきます。彼らの動きには一定のリズムがあり、作業のひとつひとつに静かなる熱意が感じられます。手慣れた手つきで、一輪一輪を丁寧に摘み取っていく姿を見ていると、香り作りは単なるテクニックだけではなく、その原料や土地を知り、大切に思い、誇りを持って働く人たちに支えられているもの改めて実感しました。

笑い声、いっぱいになっていくかご、鶏の鳴き声と木々のやさしいざわめきの中で、花の香りが心の奥にすっと染み込んできました。私たちの多くにとって、特にベトナム北部で育った者にとって、ポメロの花の香りはただの季節の香りではありません。それは「記憶」です。祖父母の裏庭で迎えた春の朝、母や姉の洗いたての髪にふわりと残る香り、街角を通る自転車の移動販売花屋さん――そんな情景が、満開の木々に囲まれていたあの朝、一気に蘇ってきました。
私たちは、ポメロブロッサム精油の原料となる花を収穫するためにこの地を訪れましたが、それ以上に大切なものを持ち帰ることになりました。それは、この香りに込められた一瞬の自然の美しさだけでなく、ベトナムならではの文化や土地のアイデンティティを世界へ届ける仕事に携わっているという誇りです。製品として完成した香りだけではなく、その香りが生まれるまでのすべての時間や手間、人の思いまでもが大切に受け継がれています。そんな価値観を共有し、理解しながらものづくりに向き合う人たちと一緒に働けることが、何よりハッピーです。

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